Little AngelPretty devil
           〜ルイヒル年の差パラレル

      “小癪なハロウィン”
 


セナんトコは
猫にもフリル付きの首輪をするほど
ご一家でそれなりの仮装とかするそうで。
ウチもあの親父が、
知り合いからパーティーや呑み会に誘われまくっているらしく。
だがまあ、
夜になってからのお出掛けは 子供がするもんじゃねぇとか
日頃偉そうに言ってるくらいだから、
当日はこっちがそれを楯に振り回す所存だけどもな。

 「あの喫茶店はどうなんだ?」
 「ん? ああ、
  もののふは基本シックな雰囲気を大事にしてるから、
  せいぜいメニューに
  特別仕様のカボチャのパイやジンジャークッキーが増えるのと、
  くうが カボチャ王子か魔法使いのコスプレする程度だ。」

イベントだからって あんまりごてごて飾ったりしねぇのがウリだからなと、
まだ人生二桁になったばかりの坊やが
落ち着いた大人の配慮へ
“そうでなきゃあ”と感慨深げに頷く図もどうかと。(笑)
胸高に腕組みをしての うんうんと
尤もらしく頷いていた蛭魔さんチの妖一だったが、
何の話題かといや、今週の木曜に迫ったハロウィンの過ごし方について。
ここは賊学大グラウンドの一角で、
簡素なベンチの上には、バインダーが散らばっていて、
すぐ傍らの広大なフィールドでは、
やや寒い風も容赦なく吹き始めた秋の空の下、
少々茜色がにじみ始めた陽の中を、
屈強なお兄さんたちが何人も駆け回っていて。
ランニングやラインへのタックル練習や、
鎖と鋼の足場の短めのハシゴを敷いて、
それを踏まぬよう
小刻みにステップを刻む“ラダー”という練習などに汗を流しておいで。
だって、秋といや大学リーグは星取り戦の真っ只中だし、
こちらのフリル・ド・リザードも、快進撃中ではあるが油断は禁物。
日頃からも体がトルクアップしやすいようにと
すぐさま起動出来る身へ仕上げ、それを維持せねば話にならぬ。

 「何たって、もう20代のジジイたちだからな。」
 「おいおい。」

元はバイク乗りの不良青年たちだが、
アメフトに関してだけはリーダーの薫陶よろしく、
ギリで正々堂々、実力だけを持て戦うことを目指しており、
練習にもきっちり参加している、
言わば 品行やや方正な健康優良不良青年たちというところ。
そうしてそして、そんな彼らを、
年齢も身長やガタイも半分ほどという
こちらの小っさな坊やがあの手この手で締めての叩き上げてるお陰様。
基礎体力だけでなく、個々の特性もずば抜けて伸びており、
ポジション別の優秀選手に毎回誰かしら選ばれてることを見ても
生半なチームではないのが伺える。

  …だからといって、
  主将とその小悪魔軍曹だけが緩んで
  季節のイベントの話に盛り上がってる…というのではなくて。

 「まあな、あのUFJもネズミーも
  ハロウィンイベントは4日までって言ってるくらいだから、
  こっちの業界も便乗したまでなのかも知んないが。」

前倒しで先週末のゲームが“ハロウィンフェア”になってたのは頷ける。
ちょっとセクシーなコスプレした おねいさんたちが各所に立ってたり、
来場するお客様へも、コスプレして来れば記念品を贈呈となってたりしたのだが。
それと同じく…そっちは文化の日だってのに、
11月の2日3日4日も同じフェアを開催しますよという
協会からの告知ファックスが舞い込んだため。

 「何だかなー。」

2日はまだ余熱もあろうが、3日と4日もというのは、

 「例えて言えば、
  去年のそれも前半に爆発的ブームだった流行語を
  年も明けたってのにやたら言いまくるみてぇな恥ずかしさがあるのにな。」

 「お、上手いこと言うな。」

三白眼をやや見張り、大きな手での拍手つきで、
葉柱が おおおと褒めてくれたが、

 「あのな。
  ケーブルテレビの姉ちゃんに、
  嬉しくもねぇ愛想振る身にもなれっての。」

…つまりはそういうこと。
各地での運営に大きく貢献して下さっている、
大口の大会スポンサーでもあるケーブルテレビからの取材へは、
出来るだけ良心的に応じてほしいとの仄めかしがあったのであり。
毎試合でそれは目立っておいでの
可愛らしいマスコットの坊やを抱えている、
こちら様や王城シルバーナイツなぞは、
主催の協会関係者からも よしなにと言われているほど。

 「何なら バックレても良いのかも知れんが。」

何せ義務教育の小学生だ、学校行事が重なりましてという、
お子様専用 最強の神器を出すという手だってあるのだけれど。
一頃よりは増えたとはいえ、
まだまだ野球やサッカーにまだまだ太刀打ち出来ない
アメフト観戦者は出来るだけ上げておきたいと。
この幼さで既に、
そういう観点からの想いも有り余ってる妖一くんなので、
結果として無下に出来ずで、猫かぶりのスキルがガンガン増すと。

 「最後のは余計だ

あ、すいませんでした。(怖)

 「ウチのゲームは土曜だから、まだマシだろう。」
 「まぁな。」

でもな、先週と同じじゃあ芸がないから考えねぇとなぁ。

 ………あ"?

黒一色のデビルズコスプレだったから、
今度はカボチャをあしらうか、いやそれだと何か間抜けだよな。

 ………もしもし?

だって何か、いかにもな恰好だと
クリスマスケーキを26日に半額で売り出すみたいでサ。
あ・そうだ、
コウモリのワッペンを銀のシールで作ってあちこちへ張り付けよう。
トカゲも紛れ込ましゃあいい、うんうん そうしよう。

 ………。(結構 乗り気じゃねぇか。)

またぞろ、
可愛らしいビニールレザーの半ズボンとかボレロとか着込んでの、
か細い腕脚おっぽり出すよな、愛くるしいいで立ちで
衆目の前へ立つつもりの彼らしいのへこそ、
心配だなぁと案じてやまないお兄さんだったりするようだけれど、

 「ルイ、当日は大きいほうのグラウンドコート羽織れよな。」
 「…へーへー。」

寒風吹きすさぶ中で応援に奮闘し、
タイムが掛かればその中へ飛び込むというのが、
この時期の坊やのゲーム中の習いでもあり。
ああそういう季節になったんだねぇと、
通りすがりのメグさんが、
ややまんざらでもないのか鼻の頭を指の腹でこするルイさんなのへ
苦笑してしまった秋の放課後でございます。




     〜Fine〜  13.10.28.


  *確か横浜では、
   日本で一番歴史の古いハロウィンパレードがあったはずだし、
   インカレのアメフト会場でも、
   コスプレして来たら粗品を上げますとかいう
   ハロウィンフェアをしていたと思います。
   妖一くんやセナくんへは、隠れファンからの期待も大きいはずで、
   チームへの注目も上げたいのでと、踏ん張るんじゃなかろうか。
   特定の保護者さんには困ったイベントでしょうね。


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